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プロフェッショナル・ファームとは?

プロフェッショナルファームという業態、会社組織があることを知った。

プロフェッショナル・サービス・ファーム―知識創造企業のマネジメントプロフェッショナル・サービス・ファーム―知識創造企業のマネジメント
(2002/02)
デービッド マイスター

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[JMM]「NYオフィス・ライフ~プロフェッショナル・ファームの「タイムシート」~」NEW YORK, 喧噪と静寂/肥和野 佳子

 米国で「プロフェッショナル・ファーム」と一般的に呼ばれているのは、弁護士事務所、会計事務所、コンサルティング事務所のことを指す。組織的にはパートナーシップ形態で「パートナー」と呼ばれる経営者が複数集まって出資・経営し、専門職の従業員および一般事務員を雇い、クライアントに専門的なサービスを売るビジネスだ。


 特に大手では国際的な巨大組織を形成しており、従業員は全世界で数万人を超えるファームもいくつかある。私が属していたKPMGは大手の会計事務所で、監査、税務、コンサルティングの部門があった。米国の主要都市に事務所があるが、NY事務所は従業員数が最も多くNYだけで約2000人程度いた。

「タイムシート」というのは働いた時間を管理するフォームで、一般の会社でも使われることはあるが、プロフェッショナル・ファームの「タイムシート」は極めて特殊だ。一般の会社では従業員が何時から何時まで働いて何時間は残業だったとか従業員の給与計算や有給休暇の管理記録をつけるためのものだ。

 しかし、プロフェッショナル・ファームでは、基本的には、クライアントに対してその仕事のためにどのくらいの時間を使ったかということで料金をチャージするので、「タイムシート」には、どのクライアントに何時間働いたか各自が記録することが極めて重要で、それが「タイムシート」の第一の役割だ。もちろん労働時間や有給休暇の管理にも使われる。この「タイムシート」のシステムは会計事務所でも弁護士事務所でもコンサルティング事務所でも基本的に同じだ。

 プロフェッショナル・ファームでは「タイムシート」は、パートナーも含めて従業員全員がつける。ファームにもよるが、だいたい10分きざみで、クライアントAに何時間何分何をしたか、クライアントBに何時間何分何をしたか、クライアントのアカウントごとに細かく記録をつけ、半月に1回ファームに提出する。以前は特定の紙のフォームを提出していたが1990年代の終わりごろからはコンピューター上に情報をインプットする形式になっている。

 プロフェッショナル(専門職の従業員)ではなく、一般事務職などの職員は自分の属する組織に対して働いているだけなので"Non-Chargeable" と呼ばれるアカウントに単に働いた時間をつければよく、午前9時から午後5時というワークロードだ。しかし、プロフェッショナルは昼休みは労働時間にカウントされず、1日8時間労働が原則で週40時間で、午前9時から午後6時が最低限だ。

 1日8時間労働が原則といっても、それで終わることはほとんどない。仕事があまりなくて、どんなにひまな時期でも午後7時より早くオフィスを出ることはなかった。それは、ファームにプロフェッショナルは"Chargeable hour (Billable hourとも言う)" を1日8時間以上つけることを奨励されていたからだ。強制はもちろん法的にできることではないので、「暗黙の掟」としてプッシュされていた。"Chargeable hour"で1日8時間は最低働けということは、事実上だいたい1日10時間以上は労働時間をとらなければならないのだ。

"Chargeable hour"というのはかなり厳格にコントロールされていて、クライアントに対してプロフェッショナルとしてチャージするに値する仕事をした時間に対してのみカウントするように言われていた。すなわち、トイレ時間、休憩時間、同僚との一般会話時間はもちろんカウントしない。たとえば、そのクライアントに対する仕事のことでも気になる問題があって会計ルールを調べるのに時間がかかってしまったりすると、プロとして知っていて当たり前のことなら"Chargeable hour"にカウントするなと言われていた。それがプロとしてクライアントにチャージする時間に値する時間かどうかの判断は自分でせよということになっていたので、事実上1日15時間労働をしても1日8時間とか10時間しか"Chargeable hour"を「タイムシート」につけない場合もある。

 会計事務所の仕事は仕事柄、季節的に仕事が多くて忙しい時期と仕事が少ない時期があり、どちらの時期でも「タイムシート」はきつかった。仕事が多い時期は「タイムシート」に1日8時間つけるのは簡単なのだが、「タイムシート」をどうつけるかが悩みの種だった。プロフェッショナルは通常同時に数件のプロジェクトを抱えていて、それぞれのプロジェクトにはタイム・バジェットがある。すなわち、クライアントAのこの仕事はだいたい何時間、クライアントBのこの仕事はだいたい何時間で仕上げなければならないという目安の時間が設定されている。これは監査や税務は毎年ある仕事で、個別にどれくらい時間がかかる仕事かある程度予想がつくからだ。ちなみに、コンサルティング系の仕事の場合は一回きりの仕事も多いので何時間かかる仕事か予想を立てにくいので監査や税務ほどタイム・バジェット管理はあまり厳しくないようだった。

 タイム・バジェットが概ね決められているので、特定の仕事にあまり多くの時間をかけられない。100時間なら、100時間を越えずに仕事をやり終えることが期待される。タイム・バジェットは過年度の担当者たちが毎年ぎりぎりの時間でやっているので、とてもゆとりのあるような時間ではなく、その時間内で仕事を終えるのはたやすいことではない。会計事務所では、仕事が速くて正確であるということが大事で、いかに効率よく、かつ効果的に働くかが常に求められる。上司からはいっさい無駄な時間を使うなと厳しく言われる。「タイムシート」に多すぎる時間がチャージされていると、いったい何をしていたのか、何に時間がかかったのか追求される。

 プロフェッショナルはその職位によって時間単位あたりの、クライアントへチャージする料金が決まっている。たとえば、入社1年目のアシスタントは1時間100ドル、3年目のシニアは180ドル、マネジャーは250ドル、パートナーは400ドルとか決まっている。パートナーは仕事を取ってくるのとプロジェクトの総監督をするのが仕事だ。プロジェクトを事実上運営するのはマネジャーで、マネジャーは自分が抱えているプロジェクトごとにアシスタントやシニアを何人使うか決める。誰を使うかはマネジャー会議で決められる。マネジャーとしては、タイム・バジェット内で手際よく仕事をこなしてくれる人を確保するのが大事で、それが結果的に自分の評価にもつながる。仕事ができると評判のよい人に仕事が集中し、評判の悪い人には仕事はそこそこしかこなくなる。すると「タイムシート」を"Chargeable hour"でうめられなくなって解雇の対象になる。

 オフィスを歩いているとたまに「あなたいくら?」と声をかけられることがある。こんなことをもし街角で言われたら、私は娼婦か、みたいな会話だが、会計事務所では、クライアントにチャージする料金であなたはいくらなのかということを聞かれている。「200ドルですけど。」とか答えると、「ちょっと高いね、使いたいけどもっと安い人にしておくわ。」とか言われることもある。

 料金の高い人はそれなりのレベルの仕事をしなければならない。入社したばかりの安い人はパソコンで表計算したり作業的な仕事が多いが、少し上になると、たとえばエクセル(表計算のソフトウェア)で作られたワークペーパーをレビューすることはあるが、自分でエクセルに入力して表計算するようなことはない。料金の高い人がそんなことをやっていたら、上司に怒られる。特にデータインプットなどの単純作業は学生のインターンを雇って安上がりにプロジェクトを運営しなければならない。当初の見積もりよりあまりに高額のフィーになってしまうとクライアントにチャージするのは難しいからだ。

 大手の会計事務所では原則的にプロフェッショナルの昇進は"UP or OUT" のシステムになっていて、査定で次のランクに進めないとファームを去ること(自分で辞めるか解雇)になる。いつまでも同じ職位で長年働くことは許されない。入社5年で3分の2程度は去る。厳しい生き残り競争の世界だ。とはいっても、解雇はともかく、優秀な人でも2~3年で辞めることもあり、もっと有利な条件の職場へ転職して去る人もたくさんいるので、ファームに残った人が必ずしも特別に優秀で勝ち残ったとは限らない。確かなのは何があっても切れずに辞めない忍耐力が人一倍あることだと思う。

 プロフェッショナルは年に何回かある査定はたいへんだ。仕事が遅いというのは決定的に悪い評価につながるので、プロフェッショナルたちは実際にかかった時間よりも少ない時間を「タイムシート」に付けがちであった。実際にかかった時間よりも少なく「タイムシート」につけることを業界用語で"Eat time"と言う。この"Eat time"をどうするかがいつも頭痛の種だった。米国の大学で使う会計学の教科書にも「"Eat time"は良くない。実際にかかった時間を正直に正確につけないといけない。」とか書かれてあるのだが、現在でも事実上"Eat time"は存在し、将来的にもなくなるのは難しい事情があるので、ある程度は目をつぶらなければならない必要悪だろう。

 査定では、"Chargeable hour"の多さがプラス評価につながるので、あまりたくさん"Eat time"することはできない。パートナーはクライアントにチャージするフィーが高ければ高いほど儲かるので、どんどんチャージせよと言うが、マネジャーはタイム・バジェットのコントロールがプラスの評価につながるので、部下に"Eat time"の暗黙のプレッシャーを与えることもある。

 時期的に仕事が忙しくないときは、それはそれで悩みの種だ。"Chargeable hour"で「タイムシート」に1日8時間つけること自体が難しい日も出てくる。チャージできる仕事がある程度あるようにマネジャーが部下に仕事を振るのだが、なにしろ机についていただけではその時間はチャージできないので、どうしても1日8時間が埋まらない日もある。そういうとき"Non- chargeable"のアカウントに時間をつけて、なんとか8時間にする。しかし"Non-chargeable"が多いと査定でマイナス評価につながるので、誰も積極的にはつけない。有給休暇は時間単位で取れるシステムになっている。そこでたとえば、2時間は有給休暇を使うことで「タイムシート」をうめてなんとか8時間にしたり、マネジャーに「有給休暇はいつとるの?」と暗黙にプレッシャーをかけられて数日間休みたくもないときに気をきかせて休暇をとったり、暇な時期にもそれなりにいろいろ苦労があった。もっとも、近年は、そんなことでは若い有能な人材にどんどん辞められてしまうので、大手会計事務所の労働事情は昔ほど悪くはないと聞く。

 会計事務所では忙しい冬場の時期は世間が祝日でもファームは休みにはならない。仕事が忙しい時期は連続して3ヶ月くらい土日も出勤で毎晩夜11時くらいまで働くこともあった。ひどい人は午前2時まで働いていた。夕食をゆっくり食べる暇もないので昼にランチ・ボックス(弁当)を2個買って、1個は夕食にとっておいて、机の上で10分で済ます。そんなふうに毎日働いていると、曜日の感覚がわからなくなる。ある朝、私は「今日はやけに道を歩いている人が少ないなあ、ひょっとして今日は世間では何かの祝日だったかなあ?」と思って会社のあるビルの前まで来て、ビルのドアが閉まっているので、ようやく今日は日曜日だということに気がついた。てっきり月曜日だと思っていたのだった。自虐的に笑ってどっと疲れる。長時間労働といっても、昼間たらたらゆっくり仕事をして、夕食も外食してオフィスを出るのが夜11時になってしまったというのとは違う。こんなに密度の高い長時間労働は極めてめずらしく、残業がほとんどない米国の一般企業からみればクレイジーな働き方の特殊な業界なのだ。

 そういう厳しい「タイムシート」で管理された働き方に慣れていると、ファームを辞めて一般企業に移った人はみな口をそろえて言う。「世間はこんなに楽だったのかって思うよ。なにしろ仕事があろうとなかろうと、そこにいるだけで仕事しているとみなされるんだから。時間をかけて仕事しても文句言われないし、残業もほとんどないし。タイムシートから開放されてほんとうに幸せ。」と。しかし、一方では会計事務所時代に叩き込まれた習性が抜けなくて、「あまりに効率の悪い仕事のしかたに違和感がある。会計事務所だったら2人でやるような仕事を6人くらいでやっている。重要な記録保持もまったくちゃんとできていなくて・・・。」とか聞くこともある。大手の会計事務所は大病院と似ている。若い人材をたくさん雇って短期間にいろいろな経験をさせて鍛え上げて、ある程度育ったら外に出す。そして、外に出た先の企業で会計・税務のリーダー的存在になることが期待されている。

 大手会計事務所を辞めた人には大学のように Alumni組織 (アラムナイ:同窓会組織)まである。Eメールがときどき送られてきて、求人情報などの情報も来る。毎年KPMG同窓生のパーティーがあり、たまにしか出席しないが昔の仲間に会うのも懐かしい。しかし会計事務所のAlumni組織の第一の目的は潜在的なクライアントの獲得だ。外に出て行った人とコネクションを保つことでビジネスの拡大につながる。ビジネスには貪欲で抜け目がない。ニューヨークらしい厳しい競争の世界だ。

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コメント

ありがとうございます

今更ウェブ進化論を読んでいて、プロフェッショナルファームという単語が出てきたので、意味をぐぐってこちらにたどり着きました。

疑問が解消されただけでなく、米国の士業事情がわかってありがたかったです。

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